舞台芸術団体の訪問調査レポート⑨【わ音】

アール・ブリュットインフォメーション&サポートセンター(アイサ)では、音楽や演劇、ダンス等の舞台芸術分野で活動する団体の活動の場を訪問し、活動に関する情報やニーズを把握する調査を実施しています。ここでは、訪問調査を行った団体の活動の様子をご紹介します。

人とのつながりを大切に。音楽を通じて恩返し【わ音】

 東近江市を中心に活動する、歌と楽器の音楽ユニット「わ音」。調査に伺った日は、太子ホールで月に一回行われている街角音楽ショウでのライブの日でした。

 「わ音」はその日出演する3組のうちトップバッター。「Amazing Grace」、「花は咲く」などのカバー曲や、オリジナル曲「だいじょうぶ」を含め7曲を演奏しました。舞台の横にはスクリーンがあり、歌詞が表示されるのですが、歌詞を読み、曲を聴いていると、勇気づけられるような、温かい気持ちになってきます。ボーカルの森野裕香里さんの透き通った歌声が、自然と心も体もほどいてくれるようです。

 ボーカルは全盲の森野さん。ギターを演奏するのは井上克己さん。二人が出会ったのは、森野さんが盲学校に在籍していたころ、井上さんが赴任してきたことがきっかけでした。当時森野さんは寄宿舎でピアノを演奏していて、井上さんもバンド活動をしていたことから、寄宿舎で一緒に音楽活動をするようになり、森野さんの卒業を機に「わ音」を結成したそうです。また、現在わ音にはサポートメンバーとしてまきさんも参加しており、ライブではキーボードを担当しています。

 わ音は、発表をすることだけが活動の目的ではなく、「地域の人とのつながりを大事にしたい」、「音楽を通じて恩返しをしたい」と言います。森野さんには障害があり、井上さんも難病を患っています。障害や難病を抱えながら生活する中で、周囲の人たちがたくさん支えてくれたと言います。ライブを聞いていると、一つ一つの音や声やメロディー、曲と曲のあいだのしゃべりからも、観客への感謝、一緒にライブを作るグループへの愛が確かに伝わってきました。

 わ音の2人は難病の人たちを支援するチャリティー活動も行っています。また、コロナ禍により出演の機会が減ってからは、Youtubeの活動も始められたそう。状況の変化にも柔軟に対応しながら、強い軸を持って活動するわ音は、2022年には10周年を迎えます。彼らだからこそ伝えられるエネルギーが、これからも観客を温めてくれることでしょう。Img_3044

わ音(森野裕香里、井上克己)

活動地域:東近江を中心に活動

主な活動:敬老会や人権講座などの地域の行事や、学校の人権学習会、地域のライブなど。

ホームページ:https://waon2012waon.wixsite.com/waon

Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCzL5-RsW5wnP02QzsmTNFSQ