障害のある方の芸術活動の訪問調査レポート⑰【湖西高島命の第九を歌う会】

アール・ブリュットインフォメーション&サポートセンター(アイサ)では、障害のある人の芸術活動を地域で展開・継続している団体の活動の場を訪問し、活動の実態やニーズを把握する調査を実施しています。ここでは、訪問調査を行った団体の活動の様子をご紹介します。Image0

【湖西高島命の第九を歌う会】

2年に一度、京都で開催されてきた「命輝け第九コンサート」は、障害の有無に関わらず誰もが同じステージに立つコンサートです。高島市周辺の出演者が、コンサートをきっかけに「継続的に活動しよう」と集まり、「湖西高島命の第九を歌う会」として活動を開始されて今年で7年目。コロナ禍前は、歌の練習だけでなく、街頭募金活動に協力したり、介護施設への音楽ボランティアとして訪問されたりと、その活動は多岐にわたっていました。
訪問したその日は、コロナのため練習をお休みされていた期間を経て、久しぶりの再開日です。それに加え、今回から新しい先生をお迎えしてのレッスンが始まる日とあって、練習の開始前から会場に集まっておられる皆さんのわくわくどきどき感が伝わってきました。
先生と皆さんは、最初こそちょっと探り合いながら?のスタートでしたが、『ドレミの歌』が始まると、音階に併せて手を上げたり下げたりしながらの躍動感ある歌声に、会場は楽しい雰囲気に包まれました。先生からも、「ここは息をたっぷり伸ばして―」「歌詞のように世界をぐんと広げる感じでー」などの声かけがあり、その度に皆さんの歌声と表情が変化していきます。本当に今日が初顔合わせ?と驚くばかり。“歌”には、人と人の距離を一気に縮める力があることを感じます。
先生から特に指摘があったのは、曲の歌い出し。2曲目の『ビリーブ』でも「歌い始めの準備をしっかりしてね」との指摘に、皆さんは伴奏のピアノの音をしっかり聴いて、その瞬間に集中されていました。
3曲目がいよいよ『第九』。ソプラノ、アルト、テノール、バスの4声に加えて、狭い音域で編曲された第5パートがあり、誰もが持てる力を十分に発揮することができるよう工夫されています。ドイツ語の歌詞も歌い込まれている様子で、皆さんの重層的なハーモニーが室内に響きます。

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コロナ禍で思うように活動ができない期間も、交流会という形で開催したり、機関紙で近況を報告したりと丁寧な活動を続けてこられました。この日も、自分のペースで歌ったり、少し遠いところから様子を眺めたりするなど、ゆるやかな参加を認め合い、誰もが心地よい時間を過ごすことを大切にされています。
そう、歌うことにはボーダーはありません。そもそも人と人の存在の間に何の壁もないんだと感じます。
8月末には、オペラ歌手との共演も決まっており、月1回の練習に加え、毎週の自主練習を積み重ねていかれるとのこと。やわらかな歌声が、聴く人の心をあたたかくするその日が楽しみです。

【湖西高島命の第九を歌う会】
活動時間:毎月1回程  14:00〜16:00
その他、隔週で自主練習を開催される場合あり
活動場所:新旭公民館(高島市新旭町北畑)
問合せ先:藤木さん(事務局)連絡先:09047626923