【レポート】令和5年度 芸術文化活動支援プログラム「鑑賞サポート研修 障害のある人とともに芸術鑑賞を楽しむために」全2回

 今年度アイサでは全2回の「鑑賞サポート研修 障害のある人とともに芸術鑑賞を楽しむために」を企画し、あいこうか市民ホールを会場として、9月14日と10月19日に開催しました。

◆第1回◆「作品のバリアフリー化について」

 第1回目は、参加者のみなさんの自己紹介から研修がスタートしました。今回の研修では、ゲストとして障害のある方にオンラインで参加していただき、会場の参加者とゲストそれぞれが自己紹介を行いました。参加者は、文化施設職員や劇団を運営している方など、文化芸術活動に携わる方が多く、普段の活動内容や、研修に参加したきっかけなどをお話しいただきました。

P2130651

 次に、講師の山上庄子さん(パラブラ株式会社)より、作品のバリアフリー化について学びました。山上さんは映画の字幕・音声ガイドの制作を中心に、演劇など舞台芸術作品のバリアフリー化などに携わっています。

P2130612
 作品のバリアフリー化とは、映画、演劇、音楽、ダンスなどの作品を鑑賞する上で、何らかの困りごとがある人に作品そのものを届けること、そのための方法として、バリアフリー日本語字幕や、音声ガイド、舞台説明、事前資料、台本サポートなどがあることを学びました。

P2130656

 後半は、蒔苗みほ子さん(パラブラ株式会社)進行のもと、視覚障害当事者の田中正子さんと聴覚障害当事者の大橋春那さんより、鑑賞をめぐる体験談をお聞きしました。

 田中さんは、「映画は音声ガイドが付いているものを探して見に行きます。舞台は事前に配信された舞台ガイドを聴いて行った演劇は100%楽しめました。」大橋さんは「字幕のタブレットを使ったりします。字幕付きの作品は日時が限定されて選べないことも多いです。」と、普段から積極的に作品鑑賞を楽しまれていることや、どのように鑑賞を楽しまれているか、困りごとなどについてお話を聞くことができました。

◆第2回◆「舞台芸術の鑑賞サポートについて」

  第2回目も、障害のある方へのインタビューと講義、さらにグループワークを交えて、作品へのアクセスや、鑑賞に係る周辺のサポートについて学びました。

 まず視覚障害当事者の田中さんと聴覚障害当事者の大橋さんに、劇場での体験談をお話しいただきました。

P2170402
 作品へのアクセスについては、バリアフリー対応作品サイトを検索したり、メールマガジンで情報を得られるそうです。大橋さんは「気になった作品に字幕が付いているか確認するのに、実際劇場に連絡するのは、迷惑でないかと遠慮する気持ちが出てしまい勇気がいります。」とも話されていました。

 劇場へのアクセスや予約については、田中さんは「行き慣れたところは盲導犬と一緒に行けますが、始めて行く場所は、場所を調べても道順が言葉で書いていないと分かりません。」大橋さんは「演劇は全体が良く見えるのは前方の席ですが、会場によっては席を選べないこともあります。」など、具体的なお話を聞くことができました。

 その後、山上さん(パラブラ株式会社)より、劇場へ行く前と行った後、それぞれのサポートのポイントについて学びました。

P2170407
 劇場へ行く前のサポートとして、まずホームページのバリアフリー化があります。最近は、問合せフォームが多くなっていますが、やはり電話やFAXを使い慣れている方も多く、システムを全て変えることができなくても、別の手段を用意しておくことが大切とのことでした。劇場へ行った後のサポートとしては、音声アナウンスやマーク表示などを用いて、どのようなバリアフリー対応があるか明記すること、また、劇場スタッフ全員がサポート内容を共有していることが大切だと話されました。

Img_4506

 最後に、研修を通して学んだことや感想を共有しあうグループワークを行いました。各グループからは「相手の立場に立った思いやりのある対応が大切」「バリアフリー対応が全然できていなかった、言われて初めて気付けた」「障害当事者の方が色々な作品鑑賞を楽しんでおられることを知れた。」といった声が聞かれました。